
ヒマラヤ山脈の麓に広がる多民族国家ネパール。世界最高峰エベレスト(8,848m)を擁し、古都カトマンズの歴史的な街並みと、ポカラの美しい湖、地方ののどかな農村風景まで、訪れる人を魅了し続ける国です。
街角にはカラフルな衣服やスパイスの香りが漂い、道端では野良犬が気持ちよさそうに眠っています。寺院では参拝者が鐘を鳴らし、祈りの声が響きます。観光客にとっては少し混沌とした光景かもしれませんが、そのすべてがネパールらしさを物語っています。
ネパールに関わる仕事をする一人として、初めてネパールを訪れました。首都カトマンズを起点に、第2の都市ポカラ、地方都市ビラトナガル、エベレストをめぐった驚きと発見、ガイドブックには書かれていない裏側とはどのようなものでしょうか。
1.ネパールハイライト:ネパールってどんな国?
■ネパールは平均年齢が若い多民族国家
人口も国土も日本の約1/3で60以上の民族で構成される多民族国家。インドと中国に囲まれた海のない内陸国です。目立った産業はなく、就業人口の3割以上1が農業と言われています。宗教はヒンズー教が8割、仏教1割、残りはイスラム教等で構成されています。驚くことに、お休みが土曜のみの週休1日とは、ネパール人は働き者です。GDPは約1,400USD 2(2024年実績、2022年から減少)、平均月収は200-250USD、まだまだ成長する可能性に溢れています。
ネパールは国内で十分な雇用機会が少ないため、出稼ぎする人が多く、GDPに占める送金の割合は約27%3(約110億USD)と世界でもレバノン等に次ぎ、送金依存度高い(4位)そうです。平均年齢は26歳4、日本は49歳ですので若いです。人口の半分が若者で労働力人口の比率が高く今後の成長が期待されます。2008年に王制廃止、主な電気供給は水力発電です。
■世界でも珍しい!時差が3時間15分
もう1点面白いのが「時差」です。ネパールと日本との時差は3時間15分、日本の方が3時間15分進んでいます。この15分単位の時差は珍しく、ニュージーランドのチャタム諸島は日本の方が3時間15分遅れており、オーストラリアのユークラ地域は日本より15分進んでいます。その15分を間違えてしまい、待ち合わせに15分遅れてしまったこともあります(笑)。現地に到着したらまず、時計をチェックしましょう。
2.ネパールの入口「トリブバン国際空港」
■深夜でも温かく活気のある「トリブバン国際空港」
ネパールの元国王トリブバン・ビクラム・シャーから名づけられたトリブバン国際空港は標高1,388に位置し、1955年に開港。滑走路が1本の空港ですが、2024年度では、国際線で約500万人5が利用しています。
空港に到着してまず驚くのが、軍服を来ているネパール人(男性)が多くいることです。一見、ドキッとしますが、笑顔で丁寧にガイドして歓迎してくれます。荷物検査でも身体検査でも入国審査でも、「どこから来たの?」「日本人?」と笑顔でフレンドリーに話しかけてくれ、ホスピタリティ溢れる「温かい国」という印象です。
【旅のTIPS】ネパール現地情報:タクシーの相場
到着が深夜だったこともあり、空港から市内まではタクシー利用が一般的です。私たちは外国人観光客のため最初は1000ルピー(1ネパールルピー100円と想定すると約1000円)を提示されましたが、少し交渉し、相場の700〜800ルピーまで下げてもらうことができました。空港の中の駐車料金は300ルピー必要なため、空港の外でタクシーを捕まえることができれば市内まで400ルピー程度が相場です。
まだ舗装されていない道路も多いため砂埃が舞うことが日常的ですし、車中で窓を閉めていても真っ黒な排気ガスが入ってくるため、マスクが欠かせません。カトマンズ市内どこにいても、人口密度が高く高度成長に発展している真っ只中ということをまざまざと感じます。夜の気温は日本の5月ほど。標高1400mの涼しさに、まずはホッと一息します。


3.ネパール首都「カトマンズ」
■若者で賑わう繁華街「タメル地区」
首都カトマンズにある「タメル地区」は元々、カトマンズの伝統的な住宅街でした。ネワール族の木彫り建築や細かい路地が多く、農家や職人が住む町だったそうです。1970年代後半に入り、ヒッピー文化が流入し、1980年頃に登山・トレッキング向けの観光地として発展、2000年代には高級ホテル等が多様化し、商業地区、観光客向けの飲食・土産店が増加した、という歴史があります
夕食はタメル地区にある日本料理店へ。建物の奥まった場所にある階段を2階に上った所にありました。お味噌やお米、乾燥わかめ、おかき、カップラーメン等の日本食が販売されていました。豚肉のみそ炒めを注文。少し甘めだったが、日本では味わえない風味で美味しかったです。柔らかい白いお米とお味噌汁につかの間の日本を感じることができてほっこりしました。

■世界遺産と地元の生活が同居する「ダルバール広場」
カトマンズの旧王宮「ダルバール広場」は、マッハ王朝やシャハ王朝の王宮跡として、クマリ(生きている神さま)の邸宅としても有名な世界遺産です。かつての王の居住地であり、政治・儀式の中心でしたが、現在では、赤レンガ、木彫りの窓、パゴダ式寺院を特徴とする「ニュワール建築」の最高傑作を見れる上、寺院、博物館、伝統行事、ネパールならではの出店等、カトマンズの観光ハイライトです。しかし、ここでは世界遺産としての“特別な空間”というより、“日常の延長”として人々が集います。子どもたちが凧揚げをし、若者が談笑し、家族連れがベンチでお弁当を広げる光景は、京都の清水寺の境内で地元の人が普通にピクニックをしているような感覚に近いかもしれません。観光客への声かけはしつこくなく、土産物屋の呼び込みも控えめ。逆に「もっとアピールした方がいいのでは?」と心配になるほどの素朴さが魅力です。

【旅のTIPS:世界遺産「ダルバール広場」入場料と出店】
- 入場料:外国人観光客は1人あたり1000ルピー(約1000円前後)
- ベストタイム:午前8時前後。観光客が少なく、朝の祈りを捧げる地元の人々の姿を見られる
- 見どころ:木彫り装飾の建物群、クマリ(生き神様)の館
- 出店:歩いていてもそれほど執拗に声をかけてこない。1~2軒、入ってみると家族経営っぽい雰囲気です。後に紹介する「シンギングボール」やキーホルダーを見ていると、一生懸命中国語や日本語で話しかけてくれました。世界遺産なので多くの観光客がいるのかと思いきや、割と地元の方々や子供たちが普通の公園のように集まって遊んでいたのが印象的です。

4.首都「カトマンズ」での発見
■複雑に絡み合う電線
カトマンズの街を歩くと、まず目に飛び込んでくるのがカオスに絡まる電線です。建物と建物の間に、まるで蜘蛛の巣のように黒いケーブルが絡み合い、重さで手の届く位置まで垂れ下がっていることもあります。これがしばしば停電の原因となり、雨風や猿などの動物が触れるだけで簡単にショートしてしまうそうです。旅行者の滞在中も、数時間の停電は珍しくありません。ホテルやレストランでは発電機が用意されていることが多いので、宿泊先は停電対策が整っているか事前に確認しておくのがおすすめです。

【旅のTIPS】停電時の必需品リスト
- モバイルバッテリー(2台持ちがおすすめ)
- 小型LEDライト(夜間外出やホテル停電時に便利)
- モバイルSIM(停電でWi-Fiが落ちても通信可能)
➡ ホテルを予約する際は「発電機の有無」を確認しておくと安心です。
■外に座っている人が多い!?
カラフルなスカーフやTシャツが販売されている通りでは、外に椅子を向けて座っている人が多いです。一人で座っている人、2~3名で座って団らんしている人もいます。お店の前を歩いていると、お客さんの呼び込みなのか、にこやかに、話しかけてきてくれる言語はたいてい中国語です。我々東洋人はみんな中国人に見られるのかもしれないです。

【旅のTIPS】要注意!道が舗装されていない?!
世界遺産ダルバール広場への道。観光客も多く、少しずつ、道路も舗装されつつありますが、途中で舗装が止まっているケースが多いです。日本で見られるベビーカーや車いす等、自転車以外の車輪を見ることはありませんでした。撮影などつい夢中になって歩いていると、突然道路がなくなることも。段差も多く、躓かないように気を付けて歩く必要があります。

瞑想と癒しの道具「シンギングボール」
ネパールやチベットの伝統楽器「シンギングボール」は、お土産としても人気です。棒をボウルの縁に沿って回すと、深い倍音が響き渡り、瞑想やヨガの場でよく使われます。
値段は大きさと材質で大きく変わり、真鍮製のシンプルなものは700〜2000円程度、職人が手彫り模様を施したものや、七つの金属を合わせた「フルムーン・ボウル」は数万円以上になることもあります。ネパール・カトマンズのお店では実際に試奏させてくれるので、「自分に合う音色」を選ぶのがコツ。旅の思い出としてだけでなく、自宅でのリラックスタイムにも活躍するでしょう。

【旅のTIPS:シンギングボールの相場】
- 小サイズ(手のひらに収まる程度):700〜2000円
- 中サイズ(両手で持てる大きさ):5000〜1万円
- 高級品(七金属製・手彫り模様入り):2万〜5万円以上
【旅のTIPS:シンギングボールを鳴らすコツ】
購入する場合はタメル地区がおすすめエリア。店ごとに価格差があるため、試奏しながら値引き交渉ができます。試奏の際にネパール人の店員さんがギュッと手を握ってきてシンギングボールを一緒に支えてくれます。ギュッと手を握ってきたのは多少ビックリしました(笑)。右手にシンギングボール、左手に棒を持ち、ゆっくりと数回、縁を回すと、ゴーンという響きと振動が右手を通じて前進に伝わってきます。
10回くらい試奏をすることでようやく綺麗な音が鳴りましたが、繰り返し綺麗な音色を奏でるにはまだまだ練習が必要だと思いました。今では毎朝出勤時に玄関にあるシンギングボールを奏でてから家を出るようにしていますが、なかなか上手に鳴らないです。「毎日、3回練習したらよいよ!」とお店のお兄さんに言われたので、頑張ります。
色々な種類のシンギングボールがあるため選ぶのは一苦労でしたが、私は可愛い色と音が自分にしっくりくるかどうかというポイントで選びました。是非あなただけのシンギングボールを探してみてください!
■治安は良い:夜の街も安心して歩ける国
カトマンズの夜、街を歩いてみると若者たちが集まり、楽しげに時間を過ごしています。観光地であるタメル地区も、屋台の明かりや音楽があふれ、活気はありますが危険を感じることは少ない印象です。
もちろんスリやタクシーでのぼったくりには注意が必要ですが、東南アジアの大都市と比べると凶悪犯罪の発生率は低め。ネパール人からも「日本人は夜でも歩ける国だよ」と言われました。
ただし街灯が少ないエリアもあるため、夜間の一人歩きは控えるか、タメルなど観光客の多いエリアを選ぶのが安心です。総じてネパールは「人懐っこい国」。目が合うとにこやかに挨拶してくれる人も多く、安心して街歩きが楽しめます。

【旅のTIPS:夜道はここに注意】
- スリ:特に危険という訳ではないが、念のためにタメル地区や観光地ではリュックを前掛けにするのが無難。
- タクシー:深夜は料金が高くなることも。乗車前に金額を確認するのが鉄則。
- 路地裏:街灯が少ないため、夜の一人歩きは避けた方が無難。
- 安心のためのアプリ活用Pathao / Indrive:ネパールで普及している配車アプリ。Uberのように使えて料金も明確。
- Google Mapsのオフライン地図:通信環境が悪い場所でも道に迷わない。
- ネパールSIM(NTCやNcell):空港で簡単に購入可能。データ量は日本より安価。15日4ギガで1000円未満という相場。
【旅のTIPS:ネパール現地SIM最新情報】
・購入できる場所
カトマンズ空港(トリブバン国際空港)
到着ロビーに NTC(Nepal Telecom) と Ncell の公式カウンターがあります。
・市内の携帯ショップ
カトマンズ(タメル地区)、ポカラなど観光地にはSIM販売店が多数。
値段は空港より少し安め。店員によって英語が苦手な場合があるので注意。
・購入方法
パスポートを提示すれば即日SIMを購入できます。英語が通じるので初めての旅行者でも安心。空港価格は街中よりやや高めですが、利便性を考えるとおすすめです。
・必要なもの
パスポート(原本)
顔写真(店で撮影してくれることも多い)
SIM購入時に 登録作業(本人確認)
・主なキャリアと料金の目安(2025年時点)
NTC(Nepal Telecom):国営キャリア。農村部や山間部でも比較的つながりやすい。
例:7日間・5GBで200ルピー(約200円)前後
Ncell:民間キャリア。都市部や観光地で高速通信に強い。
例:7日間・16GBで500ルピー(約500円)前後
ポカラやカトマンズでは利用者が多く、サポート体制もしっかり。
【豆知識:お土産をどこで買う?】
帰国のためにお土産をトリプバン空港で購入しようと思っている方は、注意が必要です。トリプバン空港にもお土産屋さんは2~3店舗はあるのですが、タメル地区で購入するよりも値段が2~3割高く、品ぞろえも大きな期待はできません。
お土産はタメル地区で購入しておくことをお勧めします!
5.第2の都市ポカラ
■自然の美しさで有名な観光都市「ポカラ」
ネパール第2の都市ポカラは観光と自然の美しさが有名で、欧米観光客に人気です。標高は827mとカトマンズよりも低く、気温もカトマンズより高いです。後ほど紹介する「アンナプルナ連邦」の玄関口であり、トレッキング、パラグライダー、マウンテンバイク、リトリート等で人気を誇ります。ネパールの中でも、ポカラは観光が最大の産業であり、多くのホテルや旅行会社、ネパール人のガイドが拠点を持っていますので、情報は豊富にあります。
■国内移動は「ブッダ・エアー(Buddha Air)」が大活躍
ポカラは、ネパール国内最大のエアラインブッダ・エアー(Buddha Air)のプロペラ機で約25分で到着します。もし、バスを使うと舗装されていないネパールの山間を走るので6~8時間かかると言われています。ブッダエアーの機内は簡素、2列50シート程度の小型機です。少し揺れるので酔う方は酔い止めを事前に服用しておくと良いですね。実際、山間を飛ぶこともあり揺れもありましたが、幸い大きな遅延や引き返しもなく、ポカラに無事到着しました。

カトマンズ上空とは打って変わり、緑が多い山間の景色。

■おすすめスポット「フェワ湖(Phewa Lake)」
ポカラで一番有名なのは「フェワ湖」、レイクサイドと呼ばれるエリアです。「フェワ湖」は「鏡の湖」と呼ばれるほど美しい湖で天候が良ければ“逆さヒマラヤ”を楽しめます。周辺には、穏やかな湖の湖畔があります。実際、雨の日でもボートに揺られる観光客の姿も。
「フェワ湖」湖畔にあるアジアンスタイルのカフェからはアンナプルナ山群が望め、水牛のハンバーガーも味わえます。ネパールはヒンズー教徒が国民の8割を超えており牛肉を食べることは宗教的にご法度とされています。個人的に水牛も牛なのに、食べて良いの?とやや疑問を抱きながらも、日本ではあまり食べる機会のない水牛に挑戦してみました。日本の和牛のような肉々しさという感じは少なく、あっさり食べやすい牛肉という味わいでした。
野良犬がカフェや路上でのんびり寝ている姿も、ちょっとした名物。しかし日本のように狂犬病の予防接種が進んでいないため、現地の人からもあまり触れないようにと注意されていました。特に悪さはしないと教わったのでのんびり寝姿を横目に、その姿に癒されました。

■世界第10位の高峰「アンナプルナ連峰(Annapurna Massif)」
アンナプルナ連峰(Annapurna Massif)は、ネパール中北部に広がるヒマラヤ山脈の一部で、ポカラの北方にそびえています。「アンナプルナ」とはサンスクリット語で 「食糧を満たす女神」 を意味し、ヒンドゥー教の豊穣の女神の名からきて、崇拝されています。その名の通り、この山域は雪解け水が農地を潤し、人々の生活を支える重要な存在です。
サランコットの丘から眺めるアンナプルナ連峰に囲まれながら、天空を歩くような朝の散歩は格別です。時期的に8月は雨季(日本でいう梅雨に当たります)のため、残念ながら朝日は雲に隠れましたが、朝5時台の霧の中の山々は水墨画のような幻想的な美しさがありました。


ちなみに乾季に訪れた同僚の写真を拝借。晴れているとこんな景色が見れるそうです。

<アンナプルナ連峰の代表的な山群>
7,000〜8,000m級の山々が連なっているネパールでも有名なアンナプルナ連峰で、代表的な山群をご紹介します。
・アンナプルナI峰(8,091m)
世界で10番目に高い山。人類が初めて登頂した8,000m峰(1950年、フランス隊が成功)。ただし登頂難易度は極めて高く、「世界で最も危険な山」と呼ばれるほど死亡率が高い。
・アンナプルナII峰(7,937m)
連峰の東端に位置し、優美な形でポカラの町からもよく見える。
・アンナプルナIII峰(7,555m)
登山ルートとしても人気があり、トレッキング中に間近で眺められる。
・マチャプチャレ(6,993m)
日本では「フィッシュテイル(魚の尾)」の名前でも知られる神聖な山。鋭い二峰の形が魚の尾に似ており、ネパール人からはシヴァ神の山として崇められ、入山禁止となっている。ポカラから眺める姿は圧巻。
<アンナプルナ連峰と観光、ビュースポット>
・サランコット(Sarangkot)
ポカラ近郊の小高い丘で、アンナプルナ連峰の朝日鑑賞スポットとして有名。雲海と山々のシルエットが幻想的。
・グルン村(Ghandruk)
アンナプルナ南峰を間近に望む山村。伝統的な石造りの家並みと民族文化に触れられる。
・人気のトレッキングルート
アンナプルナ周辺は「世界三大トレッキングルート」とも呼ばれる名所です。
・アンナプルナ・サーキット(Annapurna Circuit)
所要:2〜3週間
ルート:ポカラ周辺から入り、標高5,416mのトロン・ラ峠を越える壮大な周回コース。
特徴:氷河、乾燥地帯、温泉村まで地形の変化が豊か。
・アンナプルナ・ベースキャンプ(ABC)トレッキング
所要:7〜10日
終着点は標高4,130mのベースキャンプ。四方を8,000m級の山々に囲まれる絶景が魅力。
・プーンヒル・トレッキング
所要:3〜4日
初心者向け。標高3,210mからアンナプルナとダウラギリの大パノラマを堪能できる。
<アンナプルナ連峰訪問のベストシーズン>
ネパール、特にこのアンナプルナ連峰に訪れるベストシーズンは春(3〜4月)と秋(10〜11月)と言われています。春はシャクナゲが咲き誇り、登山道が色鮮やか、秋は空気が澄み、雪山の眺望が最も美しく、多くの観光客で賑わっています。私が宿泊したアンナプルナビューホテルは、シーズン期には毎日満室で予約が取りにくいそうです。雨季(6〜9月)は雲が多く、ヒマラヤの眺望は難しいですが、雨季に行くと空いていて、霧の中の水墨画の世界を楽しむことができます。
【豆知識】アンナプルナの危険性
アンナプルナI峰は世界で最も登頂難易度が高い山のひとつ。かつては死亡率40%を超え、他の8,000m峰と比べても突出して危険とされました。そのため、登山者にとっては“畏怖の対象”、旅行者にとっては“憧れの景観”となっています。
アンナプルナ連峰は、ただの山岳ではなく、
- 農耕を支える“豊穣の象徴”
- 旅行者にとっての“絶景の宝庫”
- 登山者にとっての“究極の挑戦”
として、多面的な魅力を持っています。
■絶景が拝める「アンナプルナビューホテル(Annapurna View Hotel)」
今回は、日本人が開発・設計したと言われているポカラのサランコットに位置する「アンナプルナビューホテル(Annapurna View Hotel)」に宿泊しました。雨季で閑散期だったため観光客とは一人も出会わいませんでしたが、オンシーズンの時は常に満室とのこと(ホテル談)。朝日のかすかな光を拝んだ後、霧雨の中の散歩では、マイナスイオンが漂う中で天空を歩くような異次元の不思議な空間でした。この季節ならではの貴重な経験です。



標高約1,600メートル・Sarangkot(サランコット)高台に位置し、アンナプルナ山群を360度見渡せるロケーションが最大の魅力です。客室はバルコニー付きで、ベッドから直接雄大な山々を眺めることができます。「侘び寂び(Wabi Sabi)」を意識した内装で、モダンな中にも落ち着いた和の雰囲気が漂います。
施設は充実しており、レストラン(ShristiやSansar)、ラウンジバー、庭園、シャトルサービス、ケーブルカー割引、アクティビティ(パラグライディングや乗馬など)も提供されています。客室は36室あり、設備としてミニバー、バスタブ付き浴室、テレビ、Wi-Fi、無料駐車場あり。豪華なスイートも用意されています。
実際の宿泊者レビューでは、「ベッドからの山の眺めが息をのむほど美しい」「スタッフが親切」「ケーブルカーへの送迎やコーヒーサービス」など、ホスピタリティ面でも高評価を獲得しています。

6.観光客が訪れない工業都市「ビラトナガル(Biratnagar)」
■活気とのどかさを併せ持つビラトナガルの街
モラン郡の州都(コシ州の州都)、ネパール最初の工業団地。インド国境(ビハール州)に近く、文化や言葉、食文化にインドの影響が強い。観光地というより、工業・商業の拠点都市として発展し、繊維・製糖・製薬・食品加工等が盛んで衣料品や工業製品が多く出回っています。人口24万人、海抜は約72mとネパールでは珍しい低地の都市。亜熱帯気候で夏は高温多湿、私が訪れた時も気温33度、湿度70%ととても蒸し暑く感じました。
・アクセス方法
国内線(カトマンズ ⇔ ビラトナガル空港)
所要時間:約40〜50分
運航会社:Buddha Air、Yeti Airlines、Shree Airlines など。便数も多く、朝から夕方までほぼ1〜2時間おきに飛んでいます。遅延や欠航も多いため、国際線乗り継ぎがある人は前日移動がおすすめ。
・バス・陸路
カトマンズから長距離バスで約12〜14時間。ローカルバスはかなり揺れるので、外国人旅行者はツーリストバスか飛行機が無難。インド国境の町 ジョガバニ(Jogbani) が近く、国境越えの拠点としても利用されている。
首都カトマンズとは違い、地方都市という名にふさわしいのどかな空間と時間が流れていました。今回、500人の子どもたちが元気いっぱいに迎えてくれる小中学校を訪問しました。ネパールの未来を担う笑顔があふれ、私もたくさんの元気をもらえました。


■ビラトナガルの食文化
東ネパールの食文化は、ネパール全体の料理と共通する部分も多くありますが、インド国境に近いことから、北インドとびばーる集の食文化の影響を多く受けています。ネパール人によると、全体的にスパイシーで油分は多め、屋台では、野菜や豆を衣で揚げた「サモサ(Samosa)」や球状の揚げパン「パニプリ(Pani Puri)」、ひよこ豆、サモサ、ヨーグルト等を組み合わせたスナックプレート「チャット(Chaat)」などインド式軽食が人気です。「モモ(ネパール餃子)」もありますが、カトマンズよりもスパイスが効いている印象です。スパイシーな食材とともに、甘いチャイやラッシーもよく飲まれています。食べ歩きは楽しいですが、生水やジュースの中に入っている氷は、避けたほうが良いです。
■賑わうインド国境
国境付近の雰囲気は独特です。ネパールとインドの陸続きの国境検問所では、車を降りて撮影することは禁じられていましたので、車中からの視察をしました。日本人はインド滞在には、事前にVISAが必要のため入ることはできません。インド人・ネパール人は身分証明書さえあれば、互いの国を行き来できるそうです。歴史的にも、このタライ平野を通ルートは物流の大動脈として、18世紀から塩、穀物、織物が取引されていました。20世紀にはインドの鉄道の整備も進み、原材料の輸入・製品輸出が盛んになり、ネパール全土の中でも重要な物流拠点となっています。
島国である日本ではイメージしづらい経験ではありますが、関税の関係でインドからネパールに輸入される食料品や日用品は非常に高額な現状があるようです。商用に大量に購入する場合は車の中を確認されることもあるようですが、家庭で利用する適量であればノーチェックでネパールに持ち込めるようです。これらの事情もありネパールでの地元のくらしぶりが垣間見れる特別な場所です。
国境周辺には、インドーネパールを往来する人たちが利用する「バイクタクシー」がたくさん待機しています。
買い物を追えた方々がネパール人・インド人が次々に入国
インド国境文化を肌で感じたい人や観光客が少ない「リアルなネパール」を見たい人にとってビラトナガルはお勧めの町です。逆に、絶景ヒマラヤや観光スポットを期待すると「地味」と感じるかもしれません。ただ、多様なネパールを知る旅としてはとても貴重な体験ができる場所です。

7.エベレストBuddha Air マウンテンフライト
■エベレストを横から見る「マウンテンフライト」
ネパールのヒマラヤ山脈を上空から眺められる特別便です。フライト前日にBuddha Airの経営者を訪問し、ネパールでゼロから航空会社を作ったご苦労話や新たな挑戦について話を伺っていたので、特別な思いで搭乗しました。
トリプバン空港の国内線を出発して、エベレストを望むヒマラヤ山脈を機内の窓から往復見ることができるスペシャルな体験です。今は雨季でしたので、1週間のうち、連日が欠航で、週のうち1日飛べるかどうかという中、奇跡的に乗ることができました!この特別便では、窓側席のみが使用できます。よって、全員が行きまたは帰りに必ずエベレストを仰ぐことができるルートになっています。
■マウンテンフライトのルート
エベレストを中間点地点としてUターンする形で、帰りも同じくヒマラヤ山脈の美しい景色を右手に見ながら空港に戻る約1時間のフライトです。
空港を出発して15分程度でヒマラヤ山脈の7000m級の山々に出逢うことができます。これまで色々な山や自然を見てきましたが、ヒマラヤ山脈と背景の真っ青な空は絶景という言葉しか見つからない圧巻な景色です。まるで絵画のような世界が目の前に広がるかのような不思議な感覚に見舞われます。
空港を出発して30分程でお目当てのエベレストが見えてきます。私が行った日は残念ながらエベレストの山頂は雲の傘がかかっており全貌を見ることはできませんでした。テレビでしか見たことないエベレストが、同じ目線の高さに現れて感動しました。本訪問日記では、前回同僚が撮影した綺麗なエベレストの写真も掲載しておきます(笑)

料金は日本円で3万円程度ですが、十分な価値のある体験ができました。
8.まとめ
ネパールがくれたもの
是非皆さんも一度ネパールを訪問されてはいかがでしょうか。
出張という目的を超えて、今回は「はじめて旅したネパール」という目線でネパールを深く知る機会になりました。雄大なヒマラヤの絶景から喧騒と穏やかさが同居する街角の日常まで、ネパールにはガイドブックだけでは伝わらないネパール現地の魅力があふれています。初めての訪問で感じたのは、多民族国家ならではの多様な文化と、すれ違うネパール人一人ひとりの笑顔の温かさでした。ヒマラヤの絶景、湖畔の穏やかな時間、そして街角で交わす人々の笑顔。日本で得られる数字や統計では語れないネパールの魅力は、実際に歩いてみなければわからないものです。少しでもネパールの魅力が皆さんに伝わっていたら嬉しいです。そして、異国の地で出会った人と人をつなぐご縁はかけがえのないもの。そんなネパールと日本を結ぶ架け橋として、私たちの 南海電鉄の海外人財紹介支援サービス IT/CAD人財の経験者採用ならJapal(ジャパール) (ネパール人材紹介・支援)にもぜひご注目ください。