ネパールってどんな国?~地理・文化・宗教などの基本情報まとめ【入門ガイド】~

 今日本で20万人以上のネパール人が暮らしていることを知っていますか?

 実は日常生活で身近に暮らしているネパール人。また、ネパールにはエベレストをはじめとする豊かな自然や歴史遺産がたくさんあります。

 そんなネパールの人や国について知らないともったいない!本記事では、地理や宗教等の面からネパールの魅力や現状を紹介します。

ネパールの地理

面積  :147,000 km²(北海道の約1.8倍)
人口  :2,969 万人
首都  :カトマンズ
公用語 :ネパール語
宗教構成:ヒンドゥー教81.3%、仏教9.0%、イスラム4.4% 他

出典:ネパール|外務省

 南アジアの内陸国で、中国(チベット自治区)とインドにはさまれた国です。地形は南から「テルアイ低地(平野)→ヒル地帯(丘陵・渓谷)→ヒマラヤ高地」の3層構造で、60 m~8,848 m(エベレスト)と標高差が激しいことが特徴です。 

ネパールの文化・歴史的資産

 ネパールには、壮大な自然と深い宗教・歴史的文化が詰まった見どころが満載です。ここでは、代表的なスポットを紹介します。

エベレスト

 エベレスト(標高約 8,849 m)は、地球上で最も高い山です。ネパール名「サガルマータ(天空の女神)」、チベット語では「チョモランマ(宇宙の母)」と呼ばれ、山岳信仰が息づく霊峰です

カトマンズ、パタン、バクタプルのダルバール広場

 マッラ王朝期の王宮や寺院群が残る旧王都の中心地で、木彫りや石彫の美術性が高く評価されています 

スワヤンブナート(モンキーテンプル)

 紀元5世紀頃に創建されたチベット仏教の聖地。雲母のように輝く黄金の仏塔と、周囲を歩く猿が特徴です 

ボダナート・ストゥーパ

 世界最大級の仏塔で、チベット文化圏の中心地。ストゥーパ周囲には僧院やマニ車が巡り、祈りの場としても重要です 。

パシュパティナート寺院

 シヴァ神を祀るヒンドゥーの主要寺院。バグマティ川沿いの荘厳な火葬儀式でも知られ、広大な伽藍を持つ世界遺産です

ネパールの宗教

 ネパールの約8割がヒンドゥー教徒です。ヒンドゥー教は多神教で、ブラフマー(創造)、ヴィシュヌ(維持)、シヴァ(破壊)の三大神を中心に信仰されています。また、ヒンドゥー教の儀式や祭りは、ネパールの社会生活に深く根ざしており、特に「ダサイン」や「ティハール」などの祭りは国民的行事として広く行われています。

 また、ヒンドゥー教において牛は豊穣や繁栄をもたらす存在として神聖視されていることから、牛肉を食べることは忌避され、ネパールの社会的な慣習や文化にも深く根付いています。

ネパールの祭り

 ネパールには年間を通じて多くの伝統的な祭りがあり、それぞれが歴史・信仰・地域の個性を色濃く映し出しています。ここでは、代表的な祭りの一部を紹介します。

ダサイン

・ヒンドゥー教最大級の祭りで、約15日間にわたり行われます。
・女神ドゥルガーが悪を倒す伝説を祝い、家族が集まり祝宴を開きます 。

ティハール

・ダサインに次ぐ重要な光の祭りで、毎年ダサインの後に行われます。
・最終日には富の女神ラクシュミーを祀り、夕刻から家々は色鮮やかなランゴリや灯火で飾られます 。

ホーリー

・春の訪れを祝う色の祭りです。
・人々が色粉や水をかけ合い、コミュニティに活気と一体感をもたらします 。

ネパール人の気質(家族中心の生活・チームワーク)

 ネパール社会では、家族単位のつながりを重視する傾向にあります。多世代が同居する家族(拡大家族)が一般的で、年長者への敬意が高く、意思決定にも強く影響します。

 職場においても年上・上司・職位の高い人に対して敬意を持つ習慣が根付いており、また、「個」よりも「チーム」の意識が強く、多くの場面で協力と相互扶助が重視されます。

 日本人でもそれぞれで価値観が異なるように、ネパール人といっても人それぞれですが以下のような気質の傾向にあります。

調和を重んじる・人が好き

 周りの人との関係性を大切にし、特に年長者や高齢者に対しリスペクトを持って接する事ができます。また、日本に在住するネパール人コミュニティの結びつきも強く、毎年日本の各地で開催されるネパールフェスティバルでは、たくさんのネパール人が歌や踊りを一緒に楽しんでいます。

家族を大切にする。

 ネパール社会では家族単位のつながりを重視する傾向にあります。例えば、日本在留ネパール人は他の外国と比較し家族滞在割合が非常に高いことが特徴です。

 アジア国別在留外国人ランキング

国籍・地域総数家族滞在割合
中国87.3万人9.5%
ベトナム63.4万人10.2%
韓国40.9万人2.2%
フィリピン34.2万人1.8%
ネパール23.3万人25.8%

※ 出入国在留管理庁公表資料を基に当社作成(2024年末調査)

我慢強い

 中国とインドという大国に挟まれ、情勢に翻弄されながら生きてきた歴史的背景と、まだまだネパール国内の仕事が少なく、ハードな仕事も多いことから、我慢強い人が多い傾向にあります。

細かい事は気にしない

 ネパール人と接していると、大雑把に感じられる部分が目立つかもしれません。特に時間については日本人の感覚とは異なり、打合せが時間通り始まらない事や、約束した時間に来ない事なども多くあります。また、遅れた事に対して怒ったり、反省を促すことも少ないです。

日本で働くネパール人はこういった時間感覚の違いを理解し、時間を重視する日本の文化に順応しています。

ネパールの食文化

 ネパール料理は、ヒマラヤの他民族国家の多彩な食文化を反映したもので、食べる時に左手を使わず、右手で分け合って食べる習慣があります。

【ネパールでのライフサイクルの例】
午前5 時頃 :起床後にスープ等を飲む
午前10 時頃:朝食としてパンやスープ等
午後1 時頃 :昼食としてダルバート
午後7 時頃 :夕食としてダルバート

ここでは、ネパールの代表的な料理を一部紹介します。

ネパールの国民食 ダルバート

 ダルバートとはネパールの代表的な家庭料理で、主に「ダル」(豆のスープ)と「バート」(ご飯)を中心とし、カレーや漬物、肉料理などが添えられたワンプレート料理です。

ネパールの餃子 モモ

 ネパールで愛される餃子で、蒸し・揚げ・スープ入り(ジョル・モモ)など多様なバリエーションがあります。具材は鶏肉・バッファローミート・野菜などで、スパイシーなトマトベースや胡麻を合わせたタレが添えられます。国民的スナックとして国内外で高い人気を誇ります 。

ネパールの焼きそば チョウメン

 日本の焼きそばに近い料理で、中華そばを野菜や卵、肉などと炒めたものに醤油や塩などで味付けたものですが、ソースやスパイス等味付けは様々です。

ネパールの産業

 ネパールの平均年齢は約24歳で国民の半数以上が若年層で、15~59歳の生産年齢人口が全体の6割以上を占める若い労働力大国です。(※日本の平均年齢は48歳)

 ネパールの主要産業は、農林業、貿易、卸売り業、不動産業ですが、就業人口の約6割は農業就業者であるといわれています。また、内陸国であることも起因し、大きな産業が国内で育ちにくく、国内では就業機会が少ないため、約200万人が海外で働く出稼ぎ大国でもあります。

 大きな産業が育ちにくい環境もあり、ネパールではデジタル戦略、IT教育に力を入れています。2019年に、ネパールの経済成長と社会厚生の増進を図ることを目的に、「2019年デジタル・ネパール・フレームワーク」(Digital Nepal Framework)が発表されました。8分野(デジタル基礎、農業、医療、教育、エネルギー、観光、金融、都市インフラ)におけるデジタル化を推進しており、ICTセクターにおけるGDPへの貢献度も近年上昇傾向にあります。

ネパールの教育

 教育制度は、就学前教育から始まり、小学校(1–8年生)、中等教育( 9–12年生)、大学教育へと続きます。公立学校では、ネパール政府作成の教科書を用いネパール語で教育を行いますが、インドや欧米の教科書を用い英語で教育を行う私立学校が人気です。また、首都部のカトマンズでは多くの学校が整備され、ICT教育の導入も進んでいますが、農村部や山岳地帯においては基礎的な教育環境が整っておらず、地域による教育環境の差も生まれています。

 

日本とのかかわり

 実はネパールと日本の親交は歴史的・経済的にも深く、ネパールは親日国家であると言われています。

 ネパールと日本の歴史を紐解くと、1899年、日本の僧侶の河口慧海がネパールを訪問し、仏教・文化的な交流の先駆けとなり、正規の外交関係は1956に樹立されました。

 ネパールでは2008年に王制は廃止されたものの、それまで培われた皇室・王室間の交流の他、国会議員の交流、経済・技術交流等があり、政治関係においても、日・ネパール関係は伝統的に良好です。

 現在、日本在留ネパールは20万人を超えており、2024年末時点において、ネパールがブラジルに代わって第5位となっています。

令和6年末現在における在留外国人数について           

国名在留者数前年度比
中国873,286人(+51,448人)
ベトナム634,361人(+69,335人)
韓国409,238人(-     918人)
フィリピン341,518人(+19,472人)
ネパール233,043(+56,707人)
ブラジル211,907人(+       67人)
インドネシア199,824人(+50,723人)
ミャンマー134,574人(+48,028人)
台湾70,147人(+  5,484人)
米国66,111人(+  2,703人)

出典:令和6年末現在における在留外国人数について | 出入国在留管理庁

 また、ネパールの主要援助国も米国、英国に次いで日本が第3位となっています。

 

ネパールの主要援助国(DAC諸国のODA実績)

(1)米国:1億3,637万ドル
(2)英国:1億829万ドル
(3)日本:8,760万ドル
(4)ドイツ:5,749万ドル
(5)スイス:3,913万ドル
出典:ネパール基礎データ|外務省

 

今回は入門編!

今後、テーマごとに深堀したネパールの魅力や、現地レポ等を掲載予定です。お楽しみに!