何故ITエンジニアはネパールが熱いのか?ーその特徴と可能性を探る

はじめに

 日本のIT業界では、慢性的な人材不足が深刻な課題となっています。急速なデジタル化の波により、システム開発や運用、AI・クラウドなどの先端技術に対応できる人材の需要は高まる一方で、国内だけではその供給が追いついていないのが現状です。

 こうした背景の中、グローバル人材の活用が注目されるようになり、インドやベトナムに続いて新たな選択肢として浮上しているのが「ネパール」です。近年、日本企業の間でネパール人エンジニアの採用が増加しており、その技術力や人間性に高い評価が集まっています。

 本記事では、ネパールという国のIT人材としてのポテンシャル、ネパール人エンジニアの強み、そして日本企業が彼らを採用するメリットについて、具体的な事例も交えながら紐解いていきます。

ネパールのIT産業の成長と国家戦略

若く活力ある国、ネパールのポテンシャル

 ネパールは、エベレストで有名なヒマラヤ山脈に囲まれた人口約3000万人を有する国です。平均年齢は25歳前後と若く、仕事に対して非常に勤勉な国民性を持っていると言われています。そんなネパールにおいて、IT分野への関心は年々高まっており、多くの若者がITを将来のキャリアとして選択しています。

 英語教育が広く普及していることもあり、ネパール人の多くは高い英語力を持ち、国際的な開発プロジェクトへの参加経験を有するエンジニアも豊富です。IT先進国インドや欧米企業のオフショア開発に関わることで、グローバルな開発手法やチーム運営に慣れている人材も多く、即戦力としての期待が高まっています。

IT産業の発展と人材輩出力

 ネパールでは2000年代初頭からITおよびBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業が始まり、現在ではITサービスが主要な輸出産業の一つに成長しています。顧客の多くは米国、ヨーロッパ、オーストラリアなどの英語圏であり、ネパール人エンジニアは国際的な開発環境での経験を積んでいます。

 現在、ネパール国内には300社以上のIT企業が存在し、毎年1万2千人を超えるIT系卒業生が新たに市場に供給されています。

国家としてのIT振興政策

 ネパール政府はIT産業の成長を国家の重要戦略と位置づけ、積極的な支援策を展開しています。これにより、海外からの投資を呼び込み、より多くの外国IT企業を誘致する土壌が整いつつあります。

 ネパール大使も、「ネパールはIT分野で計り知れない可能性を秘めており、日本との連携は双方にとって大きなチャンスになる」と語っており、国家としての意欲と国際協力への期待がうかがえます。

日本への高度人材流入の増加

 近年、ネパールから日本へ「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザで来日する高度人材が増加しています。これは、日本企業がネパール人材の技術力や語学力、文化的適応力を高く評価していることの表れです。特にIT分野では、即戦力として採用されるケースが増えており、Japalのような支援機関を通じて、来日前の日本語教育や生活支援を受けた人材が、スムーズに職場に定着しています。

 この流れは、ネパールにとっても日本にとっても好循環を生み出しており、今後さらに多くのネパール人IT人材が日本で活躍することが期待されています。

ネパール人エンジニアの特徴と強み

高い技術力と教育水準

 ネパールのトップ大学(例:トリブバン大学、カトマンズ大学)では、理論と実践を重視したIT教育が行われており、卒業生はプログラミング、アルゴリズム、クラウド技術などに精通しています。特に上位層の人材は、国際的な開発環境でも通用する技術力を備えており、日本企業にとっても即戦力となる存在です。

 トップ大学以外でも、多くの若者がITエンジニアという将来性の高い職業に魅力を感じ、幼少期からしっかりとした教育を受けています。毎年輩出される1万5千人超のIT系人材がこの層の厚さを裏付けています。

英語力と国際経験

 ネパール人エンジニアは英語を子供のころから学んでいるため流暢に話すことができる人が多く、大学教育やビジネスにおいて英語が広く用いられるため、読み書きはもちろん、会話に不自由しない人材が多いのです。

 さらに、米国や欧州、インドなどの企業とのオフショア開発に従事した経験を持つ人材もおり、国際的な開発プロジェクトに慣れている人材は、チームでの協働や、リモートコミュニケーションにおいても強みを発揮します。こうした英語力と国際経験に裏打ちされたネパール人エンジニアは、多文化のチームでも力を発揮し、日本企業のグローバル案件において頼もしい戦力となるでしょう。

日本と親和性の高い国民性と家族志向

 ネパール人は、多民族・多文化が共存する社会の中で育まれた、非常に温かく寛容な国民性を持っています。宗教的にはヒンドゥー教が主流ですが、仏教やイスラム教、キリスト教なども共存しており、異なる宗教や文化に対して寛容であることが特徴です。人々は親切で思いやりがあり、初対面でも温かく迎えてくれるホスピタリティの高さが際立っています。家庭や家族を非常に大切にし、年長者を尊重する文化が根付いており、家族間の助け合いが強く見られます。

 身体的には小柄な人が多いものの、登山ガイドのシェルパやグルカ兵に代表されるように、非常にタフで力強い一面も持っています。また、控えめで礼儀正しい性格の人が多く、日本の職場文化とも親和性が高いとされています。ネパール人の温かさ、精神性、そして多様性への寛容さは、国際社会の中でも高く評価されています。このような温かな人柄と協調性は日本人の気質とも通じるものがあり、ネパール人は日本の職場文化にも比較的適応しやすいと言われます。

 ネパールはアジアの中でも非常に親日的な国の一つとされていて、日本の経済協力(ODA)や漫画やアニメなど日本文化への馴染みもあり、多くのネパール人が日本に対して好意的な感情を抱いています。そして人と人との温かい交流が、両国の友好関係を支えています。日本は安全性や清潔性などが高く評価されており、「日本で働きたい」という思いを強く持つエンジニアがたくさんいます。特に「家族で日本に住みたい」と、家族帯同率が他国に比べて突出して高い傾向にあります。これは、日本の治安の良さ等が、長期的な生活基盤として魅力的に映っている証拠でもあり、彼らが日本で長く住むことを志向している一つのデータと捉えることができます。

国籍・地域総数家族滞在割合
中国87.3万人9.5%
ベトナム63.4万人10.2%
韓国40.9万人2.2%
フィリピン34.2万人1.8%
ネパール23.3万人25.8%

※ 出入国在留管理庁公表資料を基に当社作成(2024年末調査)

日本語習得のしやすさ

 ネパール人は、多言語環境で育つことが多く、英語や母語(ネパール語)を自在に使いこなすバイリンガルまたはマルチリンガルの人が多くいます。このような言語的背景は、日本語の習得にも大きな強みとなります。特に注目すべきは、ネパール語と日本語の文法構造が似ている点です。両言語とも「主語+目的語+動詞(SOV)」の語順を基本としており、また、英語のように冠詞や複雑な時制変化がない代わりに、日本語と同様に助詞(postposition)を用いて文中の関係を示すなど、言語構造にいくつかの共通点があります。さらにネパール語には尊敬を表す敬語に相当する概念もあり、場面に応じて異なる人称や語尾を使い分ける点では日本語の敬語に通じるものがあります。

 このため、ネパール人は日本語の文法を自然に理解しやすく、文法的な混乱が少ないという利点があります。さらに、もともと複数の言語を使い分けるバイリンガルが多いことに加え、母語の構造上も親和性が高いため、ネパール人は日本語の文法を比較的スムーズに理解できます。一般論としてすでに複数の言語を学び、使い分ける経験がある人は、言語の構造や文法の違いを理解する力が高く、新しい言語にも柔軟に対応できるとされています。音の認識力や学習戦略にも優れており、日本語の発音や敬語などの複雑な要素にも柔軟に適応する人が多く、日本語習得に対する高い順応力を発揮しています。

ハングリー精神と成長意欲

 ネパール人エンジニアには、勤勉で向上心が強く、ハングリー精神に溢れた人が多い点も見逃せません。限られたリソースの中で自ら学び成長してきた背景から、新しい技術への貪欲さと適応力が備わっています。現場での吸収も早く、社内研修やOJTを通じてどんどんスキルアップしていく姿勢が評価されています。ネパール人を採用した日本企業からは「常に勉強熱心で周囲の日本人社員にも良い刺激を与えている」という声も聞かれます。未知の分野にも挑戦していく意欲が高いため、将来のリーダー候補としての成長が期待できます。こうした前向きな姿勢と成長意欲は、日本企業に新風をもたらし、組織全体の活性化にも寄与するでしょう。

日本企業にとっての採用メリット

若く柔軟な人材層  

 IT/CADエンジニアに特化した海外人材紹介・定着支援サービスJapalを通じて日本で働くネパール人IT人材の平均年齢は20代後半と若く、非常にエネルギッシュです。彼らは新しい技術の習得も早く、変化の激しいIT業界や製造業界のエンジニアとして、頼もしい存在となっています。若手であることは、組織に活気を与えるだけでなく、長期的に育成することで将来の中核人材として活躍してもらえる可能性や期待感も高まります。

 日本では中堅・若手エンジニアの不足が指摘されていますが、ネパールからの人材は頼もしい存在として、企業の高齢化といった年代構成を若返らせる効果もあります。また、柔軟な発想や新しい視点を持ち込んでくれるため、組織内のイノベーション促進にもつながるでしょう。

条件に応じた柔軟なマッチング

 ネパールには「日本で働きたい」という強い意志を持つネパール人IT人材は豊富に存在しており、企業規模を問わずそれぞれのニーズに合った人材と出会える可能性が広がっています。たとえば、高度なスキルセットを持つ即戦力エンジニアから、将来性豊かな若手まで、多様な層の候補者が揃っています。都市部・地方いずれの勤務地希望にも柔軟に応じられる人材が多いのも特徴です。この点は後述するように「居住地に対するこだわりが比較的少ない」ためです。年収や勤務条件はもちろん、「日本語でのコミュニケーション能力」「長期就労意欲」「特定の開発分野の経験」など、企業ごとの細かな要件にマッチする人材が豊かであることもネパール人材の魅力です。

国際ビジネスのハブ人材としてのポテンシャル

 ネパール人エンジニアは技術力だけでなく高い英語力を兼ね備えているため、日本企業のグローバル展開を支える架け橋となり得る存在です。英語が堪能で海外経験もある彼らは、海外クライアントや海外オフィスとのコミュニケーションに強みを発揮します。

 日本企業が英語圏のプロジェクトを受注したり、海外チームと協働するなどの機会において、社内にIRが分かり、英語ができる人材は大きな助けとなります。また、ネパール人エンジニア自身が多文化環境に慣れているため、外国籍メンバーを含むチームの潤滑油となり、異なる文化間の調整役を担うこともできます。さらに近年は、ネパール人エンジニアを現地オフィスや開発拠点のリーダー候補とする動きも出てきています。

 彼らは日本語と英語のバイリンガルであるだけでなく、多様な文化に精通したグローバル人材でもあるため、国際ビジネスのハブ人材として活躍するポテンシャルが非常に高いです。実際、社内公用語を英語化して世界中から優秀な人材を集めている楽天では、2012年の英語公用語化以降に社員の国籍が100カ国以上に広がったとされています。メルカリでも2018年の新卒エンジニア採用で50人中44人を外国籍が占め、2021年には社員の約半数が海外出身となりました。このように、多国籍の人材で組織を構築しイノベーションにつなげる事例が増えており、ネパール人エンジニアも日本企業の技術革新を支える戦力になり得るでしょう。

まとめと今後の展望

日本の人材不足とネパールの可能性

 日本では2030年に最大79万人のIT人材が不足すると予測されており、ネパールの若く優秀な人材がその解決策となり得ます。スキル、語学力、教育水準、文化的親和性を兼ね備えたネパール人材は、単純な人材不足を補う手段ではなく、企業成長への中核戦力となりうる可能性を秘めています。

IT/CADエンジニアに特化した海外人材紹介・定着支援サービスJapalによる人材採用の支援

 日本企業がネパール人材を採用する際、言語や文化の壁を不安に感じることもありますが、Japalではその課題を解消する支援体制が整っています。Japalを通じて紹介される人材は、大学卒の学力を有し、来日前に半年間の集中学習を経て日本語能力試験N4レベルを習得します。加えて、来日後にも1年間のオンライン日本語教育の場を提供し、長く日本で働くことのできる日本語力の習得を目指します。

 さらに、JapalではすでにIT分野での実務経験を持つネパール人材を対象にした紹介を行っているため、社会人教育に対するコストが不要で、企業のニーズに応じて「日本語が話せる技術経験者人材」をマッチングすることが可能です。これにより、採用後すぐに現場で活躍できる人材を確保できるだけでなく、長期的な定着と成長も期待できます。

将来の展望と日本企業への提言

 近年、日本語と英語の両方を使いこなすバイリンガルのネパール人材が増加しており、日本企業にとってネパールは、海外展開やオフショア開発の新たな拠点として注目すべき存在となっています。東アジアや西アジアの一部ではアウトソーシングコストが高騰する中、ネパールのIT産業はコスト競争力と技術力の両面で魅力的な選択肢です。

 今後、日本で働くネパール人エンジニアの数はさらに増加すると予想されており、優秀な人材の獲得競争はますます激しくなるでしょう。外国人との共生社会が現実味を帯びる今、ネパールIT人材の採用に早期に取り組むことは、単なる人材確保にとどまらず、企業の成長を支える戦略的な投資となるとともに、企業の競争力を高める有効な手段となります。Japalでは、ネパールの優秀なIT人材と日本企業をつなぐ支援を行っています。未来の成長に向けて、今こそネパール人材の可能性に目を向けてみませんか?