
近年、日本では人手不足が深刻化し、特にIT、製造、介護、サービス業など幅広い分野で外国人材の採用が増えています。
しかし、初めて外国人を採用する中小企業からは「採用に関するコストが負担」「定着するか不安」という声が多く聞かれます。
国籍を問わず利用できる国の助成金を活用すれば、採用から定着支援までの費用を軽減できます。実際、ITや介護分野で活躍するネパール人材の採用にも、これら助成金は活用できます。本記事では、外国人を採用する際に国籍を問わずに使える4つの助成金の概要、要件、注意点などを詳しく解説していきます。条件を満たせば、大企業・中小企業いずれも受給可能です。採用してから「知らなかった」「知っていれば・・・」とならないためにも、本記事を完全ガイド版としてご活用ください。
以下は特に外国人材の採用・定着で活用しやすい主な制度です。各制度とも雇用保険適用事業主であること等が基本要件ですが、条件を満たせば中小企業・大企業いずれも受給可能です。
助成金名 | 主な対象 | 中小企業優遇 |
---|---|---|
人材確保等支援助成金 | 外国人労働者の職場定着に取り組む事業主 | 同額 |
トライアル雇用助成金 | 初期採用(試行雇用) | 同額 |
キャリアアップ助成金 | 非正規→正社員転換 | 有 |
人材開発支援助成金 | 研修・スキルアップ | 有 |
※要件等は主要な部分を抜粋していますので、制度活用する場合、必ず厚生労働省ホームページや専門 機関にご相談下さい
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

「人材確保等支援助成金」とは、在籍する外国人労働者が長く働きやすい職場環境を整備する取組を行った事業主に支給される助成金です。
■「人材確保等支援助成金」活用の目的
「人材確保等支援助成金」を活用する目的は、外国人材がその職場で活躍・定着するための、職場定着支援のためです。外国人労働者は日本の労働法制や習慣への不慣れ、言語の違いなどから労働条件や解雇をめぐるトラブルが生じやすい傾向があります。 初めて日本で働く外国人には不安がつきものであり、多言語対応や相談体制の整備など特有の事情に配慮した就労環境の整備 を計画・実施することで、その費用の一部が助成されます。 例えば、就業規則の英訳整備や社内相談窓口の設置費用等に対し、まとまった補助が受けられるため、外国人社員の受入基盤強化に役立てることができ ます。
■「人材確保等支援助成金」の概要・主な受給要件・受給額
「人材確保等支援助成金」を受給するための主な3つの要件、受給額や使用できる経費の内訳などを説明します。経費の内訳をみるとどのような対応をすれば外国人を雇用した際、その人材が定着するのか、ヒントが得られます。
概要 | 外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行などに関する知識の不足や言語の違いなどから、労働条件・解雇などに関するトラブルが生じやすい傾向にあります。この助成金は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して、その経費の一部を助成するものです。 |
主な受給要件 | (1)外国人労働者を雇用している事業主であること (2)認定を受けた就労環境整備計画に基づき、外国人労働者に対する就労環境整備措置(1及び2の措置に加え、3~5のいずれかを選択)を新たに導入し、外国人労働者に対して実施すること1雇用労務責任者の選任 2就業規則等の多言語化 3苦情・相談体制の整備 4一時帰国のための休暇制度の整備 5社内マニュアル・標識類等の多言語化 (3)就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が15%以下であること ※このほかにも、要件があります |
受給額 | 1受給要件をすべて満たした場合に、1制度導入につき20万円(上限80万円)が支給されます。 2支給対象経費計画期間内に、就労環境整備措置を導入し実施した経費を対象とします。 (1)通訳費 (2)翻訳機器導入費 (3)翻訳料 (4)弁護士、社会保険労務士等への委託料 (5)社内標識類の設置・改修費 |
参照:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)|厚生労働省
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

「トライアル雇用助成金」は、ハローワーク等の紹介により、職業経験や技能不足など就職が困難な求職者(外国人を含む)を最大3か月の試行雇用で受け入れた事業主を対象に支給される制度です。
■「トライアル雇用助成金」活用の目的
外国人を雇用するにあたり、職業経験・スキルが不足している人材を、最初から無期雇用で雇用する事はどの企業も不安に思うでしょう。「トライアル雇用助成金」は、そういった企業が人材の適正を見極めたうえで本採用に進めることを支援する制度です。「トライアル雇用助成金」の支給額は、中小企業・大企業とも原則1人あたり月額最大4万円(最長3ヶ月)で、対象者がひとり親家庭の親の場合は、月額5万円に増額されます。人材適性を見極めた上で本採用する際のリスク低減に役立ちます。
■「トライアル雇用助成金」の概要・主な受給要件・受給額
「トライアル雇用助成金」を受給するためには、労働者に対して4つの要件すべてを満たす必要があります。また、雇い入れの条件も決められているため、抜け漏れがないか確認しましょう。支給対象期間や金額も要件によって異なりますが、外国人人材を初めて採用する第一歩として、役立つ制度として活用している企業が増えています。
概要 | 職業経験の不足などから就職が困難な求職者等を、無期雇用契約へ移行することを前提に、一定期間試行雇用(トライアル雇用)を行う事業主に対して助成することにより、求職者の早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的としています。 |
主な受給要件 | 本助成金は次の1の対象労働者を2の条件で雇い入れた場合に受給することができます。 1 対象労働者 次の[1]から[4]のいずれにも該当する者であること [1]1週間の所定労働時間が30時間以上の無期雇用による雇入れを希望している者であっ て、トライアル雇用制度を理解した上で、トライアル雇用による雇入れについても希 望している者であること [2]ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等(以下「ハローワーク等」という。)に 求職申込をしていること [3]ハローワーク等の職業紹介の日(以下「紹介日」という。)において、次のアからエま でのいずれにも該当しない者であること ア 安定した職業(※)に就いている者 ※期間の定めのない労働契約を締結し、1週間の所定労働時間が通常の労働者の1 週間の労働時間と同じ程度であるものをいう。 イ 自ら事業を営んでいる者又は役員等に就いている者であって、1週間当たりの実 働時間が30時間以上のもの ウ 学校に在籍している者 エ トライアル雇用期間中のトライアル雇用労働者 [4]次のアからオまでのいずれかに該当する者であること ア 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している イ 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている(※) ※パート・アルバイトなどを含め、一切の就労をしていないこと ウ 妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いて いない期間が1年を超えている エ 60歳未満で安定した職業に就いておらず、ハローワーク等において担当者制によ る個別支援を受けている オ 就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する(※) ※生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、 中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者 2 雇入れの条件 [1]ハローワークや紹介企業により採用すること [2]原則3か月の試用雇用であること [3]週30時間以上(※)の通常労働者(フルタイム)と同等であること ※対象労働者が日雇労働者、ホームレス、住居喪失不安定就労者の場合は20時間以上 ※このほかにも、要件があります |
受給額 | 【支給対象期間】 (1)本助成金は、雇入れの日から1か月単位で最長3か月間(以下「支給対象期間」とい う)を対象として助成が行われます。 (2)本助成金は、この支給対象期間中の各月の月額の合計額がまとめて1回で支給されま す。 【支給額】 支給対象者1人につき月額4万円(※)が支給されます。 ※対象労働者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合は5万円 |
参照:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)|厚生労働省
キャリアアップ助成金(正社員化コース)

「キャリアアップ助成金」は、有期雇用・パート・派遣など非正規労働者の正社員転換や賃金アップ等のキャリアアップ施策を実施した事業主に支給される助成金です。
■「キャリアアップ助成金」活用の目的
外国人人材を採用した後に、その人材が企業でさらに活躍できる機会提供に役立ちます。最初は 契約社員として雇用した高度人材を、正規雇用に転換する際に活用できる上、人材定着やモチベーション向上につながりるメリットがあります。具体的には、労働者を有期契約から無期契約・正社員に登用した場合や、ベースアップ等の処遇改善を行った場合に申請できます。事前にキャリアアップ計画の策定・届出が必要で、6ヶ月以上の正社員勤務後に支給申請を行います。
■「キャリアアップ助成金」の概要・主な受給要件・受給額
「キャリアアップ助成金」を受給するためには、正社員化の支援や処遇アップ等の取り組みを実施することが必要で、正社員化や処遇アップ等を実施する前日までに労働組合の意見を反映した「キャリアアップ計画」の提出が必要です。有期雇用労働者には最大80万円と、中小企業向けの支給額が手厚く設定されています。
概要 | 就業規則または労働協約その他これに準ずるものに規定した制度に基づき、有期雇用労働者等を正社員化した場合に助成します。 ※多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)へ転換等(派遣労働者の直接雇用含む)した場合も正規雇用労働者へ転換等したものとみなします。 |
主な受給要件 | 1有期雇用労働者または無期雇用労働者であること。 2正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた有期雇用労働者等でないこと。(正社員求人に応募し正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた者ではないこと。)(正社員求人に応募し、試用期間として有期契約を結んだ者にはその理由を確認する場合があります。) ※このほかにも、要件があります。 |
受給額 | 重点支援対象者 ・有期雇用労働者:80万円(大企業60万円) ・無期雇用労働者:40万円(大企業30万円) 上記以外 ・有期雇用労働者:40万円(大企業30万円) ・無期雇用労働者:20万円(大企業15万円) ※ 重点支援対象者とは、a~cのいずれかに該当する者 a:雇入れから3年以上の有期雇用労働 b:雇入れから3年未満で、次の①②いずれにも該当する有期雇用労働者 ①過去5年間に正規雇用労働者であった期間が合計1年以下 ②過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない c:派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者 ※ 雇用された期間が通算5年を超える有期雇用労働者については無期雇用労働者とみなし ます このほかにも、 一定の賃上げで助成率がアップする加算要件があります。 |
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)

「人材開発支援助成金」は、従業員に計画的な職業訓練(OFF-JTやOJTによる実践的な研修)を実施した企業に対して、研修費用や訓練中の賃金の一部を助成する制度です。
■「人材開発支援助成金」活用の目的
「人材開発支援助成金」は、外国人社員が新たに 専門技術を習得する際の研修を行う場合などに活用することができます。支給には事前に訓練計画の認定申請が必要ですが、訓練実施後に成果報告として支給申請されます 。
■「人材開発支援助成金」の概要・主な受給要件・受給額
「人材開発支援助成金」を受給するためには、労働者に対してその職務に関連する専門知識や技能を習得する際に活用できますが、いくつか要件があります。雇用保険被保険者であれば、正規雇用・非正規雇用いずれも対象となります。「キャリアアップ助成金」と同様に、中小企業向けの支給額が手厚く設定されています。
概要 | 人材開発支援助成金は、事業主が雇用する労働者に対して、その職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。 |
主な受給要件 | 事業主:雇用保険適用事業所の事業主 労働者:雇用保険被保険者 ① 人材育成訓練 :10 時間以上のOFF-JTによる訓練 ② 認定実習併用職業訓練:新卒者等のために実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練 ③ 有期実習型訓練 :有期契約労働者等の正社員転換等を目的として実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練 ※このほかにも、要件があります |
受給額 | ① 人材育成訓練 正規雇用労働者等の場合 ・経費助成率:中小45%(大企業:30%) ※賃金要件等満たす場合:+15% ・賃金助成額:中小800円(大企業:400円) ※賃金要件等満たす場合:中小+200円(+大企業100円) 非正規雇用労働者の場合 ・経費助成率:中小70% ※賃金要件等満たす場合:+15% ・賃金助成額:中小800円(大企業:400円) ※賃金要件等満たす場合:中小+200円(+大企業100円) ② 認定実習併用職業訓練 ・経費助成:45%(大企業:30%) ※賃金要件等満たす場合:+15% ・賃金助成:800円/時(大企業:400円) ※賃金要件等満たす場合:中小+200円(+大企業100円) ・OJT実施助成:20万円/人・コース(大企業11万円) ※賃金要件等満たす場合:+5万円(大企業+3万円) ③ 有期実習型訓練 ・経費助成:75% ※賃金要件等満たす場合:+25% ・賃金助成:800円/時(大企業:400円) ※賃金要件等満たす場合:中小+200円(大企業+100円) ・OJT実施助成:10万円/人・コース(大企業9万円) ※賃金要件等満たす場合:+3万円(大企業+3万円) 賃金要件等とは 訓練修了後に行う訓練受講者に係る賃金改定前後の賃金を比較して5%以上上昇している場合、又は、資格等手当の支払を就業規則等に規定した上で、訓練修了後に訓練受講者に対して 当該手当を支払い、かつ、当該手当の支払い前後の賃金を比較して3%以上上昇している場合に、助成率等を加算する。 |
外国人材採用したいとき、誰に相談すれば良い?
以上、助成金の主な4種類「人材確保等支援助成金」、「トライアル雇用助成金」、「キャリアアップ助成金」、「人材開発支援助成金」の概要と要件等について、厚生労働省のホームページから重要なポイントを抽出して説明してきました。正直、要件などが複雑で、いざ手続きに入ろうと思うと申請書類やスケジュールなど、理解すべき情報はまだまだあります。また、 外国人材の採用には、助成金だけではなくビザや定着後の支援などが必要となってきます。 専門の支援事業者を活用することでスムーズに手続きを進められるケースがありますので、検討してみましょう 。ネパール人材の採用支援に強いJapalなら、助成金の活用も含めたトータルサポートが可能です。
助成金:社会保険労務士(社労士)
助成金の申請にあたり、雇用管理や社会保険の専門家である社会保険労務士(社労士)に相談してみる方法があります。社労士は、雇用契約書の作成や労務管理の助言のほか、助成金申請手続きの代行を依頼することも可能です。助成金要件の確認から申請書類作成・提出までサポートしてくれるため、自社だけでは申請に不安がある場合に心強い存在です。
人材の紹介・定着支援:外国人に特化した人材紹介・支援会社
企業で外国人を採用しようと思った際、どこからどう探して良いか分からない、外国人と日本人の違いなどが分からないといった不安を持たれる大企業、中小企業の方々のお声をよく聞きます。外国人に特化した人材紹介や採用支援を専門とする民間企業、あるいは定着までを支援している企業も多数あります。南海電気鉄道は、関西の鉄道・不動産等のインフラを担う企業も外国人に特化した人材紹介・定着支援サービスを提供していますので、良かったらチェックしてみてください。
南海電鉄が提供するJapal(ジャパール)は、IT/CAD人材の求人紹介から雇用後の定着支援まで幅広く提供しています。
ビザ・在留資格:行政書士
いざ外国人を迎え入れる事になった場合、外国人の在留資格や就労ビザの申請が必須となります。行政書士は、入管手続き(在留資格申請)の代行や各種許認可申請を担う法律専門職です。外国人の在留資格取得・更新手続きや就労ビザ申請を依頼でき、企業側の手続負担を軽減できます。特定技能外国人の受入れの際には「支援計画」の作成支援や登録支援機関としてのサポートを行う行政書士法人もあります。例えば、行政書士法人と社労士法人の両方の機能を備え一貫支援する企業や、外国人雇用に精通した行政書士事務所が各種助言を提供しています。在留資格についての詳しい内容はHello Nepalの「外国人採用に必須!在留資格の徹底解説―技能実習・特定技能・技人国の徹底比較 Hello Nepal」でもご紹介していますのでぜひご活用ください。
まとめ
公的な助成金・補助金制度を上手に活用することで、外国人材の採用にかかるコストや負担を大きく軽減できます。特に中小企業にとっては心強い支援策と言えるでしょう。また、在留資格の取得手続きや定着支援まで含めて検討することで、採用した外国人が長く戦力として活躍してくれます。助成金の申請方法が不明な場合は専門家に相談するのも一手ですが、まずは情報収集から始めてみましょう。私たちJapal(ネパール人材育成・紹介サービス)では、助成金申請のサポートも行っていますので、外国人雇用に関するお困りごとがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。各制度の要件や受付期間は毎年見直されるため、最新情報を確認してください。