日本とネパールのかけ橋。~TERAKOYA Academia代表 シャラド ライ氏 インタビュー~

 現在、日本在留ネパール人は23万人を超え、2024年末時点において、ネパールがブラジルに代わって第5位となっています[1]。日本に夢を抱いてやってくるネパールの若者たちの数は年々増えており、そのエネルギッシュな姿の背景には、母国が抱える課題と、未来への強い渇望があります。

今回は、日本で仕事をしたいネパール人に日本語・日本文化を教える愛溢れる学校を設立したTERAKOYA Academiaの代表である、シャラド ライ氏にインタビュー。ネパールの教育支援など多岐にわたるプロジェクトを手掛ける自身の活動の原動力から、ネパールの現状と未来の可能性、そして日本との架け橋としての役割まで、その熱い思いを伺いました。

TERAKOYA Academia代表 シャラド ライ氏

「国づくりに貢献したい」という思いが全ての始まり

――シャラドさんは日本語学校やIT企業、小学校設立など、様々なプロジェクトを手掛けられていますが、ご自身の活動の源泉は何ですか?

シャラド: ネパールの国づくりに貢献できることは全てやりたいという思いが原点です。ネパールはまだまだこれから発展する国ですので、その成長スピードや手法に自分が貢献できるようになったら幸せと考え頑張っています。

――国に貢献したいという思いは、どのような経験から生まれたのでしょうか?

シャラド: 私はもともとネパールのヒマラヤ山間部にあるコタン(Kotan)という水道もガスも電気も通っていないネパールの田舎の方で生まれ育ちました。学校に行くのも歩いて1時間半かかり、勉強するには過酷な環境でした。それが、たまたまネパール全国から毎年99人だけ選ばれる特待生に選出され、国のお金で首都カトマンズのきちんとした教育を受けられることになりました。そこで自分の人生が一気に変わりました。今の人生は全てあの時、自分に投資してくれた国のお陰だと心から思っていますので、自分の人生をかけて、国に恩返しをしていきたいという強い思いがずっと心にあります。

日本とネパールの違いは、社会インフラの質

――ネパールの方から見て、日本との一番の違いはどのような点でしょうか?

シャラド: 一番の違いは、教育制度です。日本では、中学校までは義務教育として沖縄から北海道まで一定のクオリティの教育を受ける機会があります。そして国民皆保険制度によって、病院にも日本では当たり前にアクセスできます。でもネパールでは残念ながら、7割の子どもたちが良い教育、良い病院へのアクセスがありません。

――社会的なインフラが整っているかどうか、ということですね。

シャラド: はい。日本のような先進国では教育、病院などの社会的なインフラがきちんと整っていて、国民一人ひとりが国に見守られているということを日々感じることができます。ネパールではまだ多くの国民がそう感じることができない。それが国としての大きな違いかなと思います。

国のポテンシャルを引き出す鍵は「教育」

シャラド氏が代表を務める「YouMe(ユメ)School」

――ネパールがより良くなるために、今一番必要なことは何ですか?

シャラド: それは教育だと思います。ネパールでも、スマートフォンやインターネットなど世界的に普及されているものを手に入れる事はできています。しかし、ひとりひとりの子どもたちにとって、良い教育を受けるチャンスがあり、自分が人生でやりたいことができる状況にはなっていないと思います。

ネパールには約2万9000校の公立学校がありますが、その教育の質が良くなれば、子どもたちが自分の能力を最大限に発揮できるようになります。学校は一人ひとりの子どものポテンシャルを引き出す場所ですから、国にとって一番大事な存在です。国の最も大事な資源である人々の力がどれだけ発揮できるかによって、国の可能性が決まります。

――教育が変われば、国が変わると。

シャラド: はい。教育を変えることができれば、国民が多様な産業を作り、発展させていける力を持つことができます。教育なしで産業づくりは難しいでしょう。

――シャラドさんは、経済的に恵まれない子どもたちにも教育の場を提供するために「YouMe(ユメ)School」を設立・運営されています。どのような思いがありますか?

シャラド: ネパールには3,000万人の「人」という資源があります。この一人ひとりの成長の可能性を追求することができれば、国は変わるのではないかと考えます。今は「YouMe School」を2つ運営していますが、今後もっと増やしていきたいです。学校教育から、そこへ通う子どもたちの家庭を豊かに、幸せにしていきたい。そうした形で、いつかは国に貢献できるのではないかと考えています。

シャラド氏が代表を務める「YouMe School」

若者の不満が爆発した暴動の背景

――2025年9月にネパールで政府のソーシャルメディア禁止令に端を発した、若者による暴動がありました。なぜ、あのようなことが起きてしまったのでしょうか?

シャラド: 数日間で政権が変わってしまうというネパールでも歴史的な出来事となりました。しかし、私も暴動の直後、ネパールに行きましたが、今では普段通りの生活に戻っています。

 ネパール国内ではスマートフォンやインターネットが普及し、世界最先端の情報ツールを誰もが持っています。しかし、変わっていないのが学校教育です。充分な教育を受ける事ができていない若者たちは、スキルがないために良い仕事に就けず、海外へ出稼ぎとして、危険な仕事に従事せざるを得ない状況です。これはあくまでも私の個人的な考えですが、この解決策が見えない中で、若者たちのフラストレーションがどんどん溜まっていき、今回のような形で爆発したのだと思います。

――政治家への反発が形になったということでしょうか。

シャラド: 政治家が成果を出せなかったことに対する反発でしょう。この暴動は、政治をつかさどる人が重い責任を自覚できたという意味では、良かった面もあるかもしれません。しかし、今回のような暴動が続くと、法を守らない文化が生まれてしまう危険性もはらんでいます。新たなリーダーがしっかり国を主導してほしいと考えています。

ネパールIT産業の現状とエンジニアの変化

――ネパールでは、国家施策としてIT産業・教育に力を入れているとお聞きしました。ネパールのIT産業の今について教えてください。

シャラド:ネパールは内陸国のため、製造業などの産業が育ちにくい状況です。しかしIT産業であれば海が無くても、人の力で発展させることができます。

今では、AIなどの最先端技術にも触れる事ができるようになり、インド市場などグローバルに、ネパールで開発したサービスや製品を出せるようになってきています。若者たちも、日本やアメリカなど色々な国に行って挑戦して、グローバルな活躍を志すなど、大きな夢をもてるようになると思います。

グローバル社会で輝く、日本とインドの架け橋としての可能性

――グローバル社会において、ネパールの可能性をどのように見ていらっしゃいますか?

シャラド: ネパールの隣にはインドがあり、ネパール人は自由にインドへ行って働くことができます。インドはこれから世界の経済や産業の中心になっていくでしょう。そこで活躍し、ネパールにも貢献できる人々が現れてくると期待しています。

――日本の企業との関わりについては、いかがでしょうか。

シャラド: 私は長く日本とネパールを往来していますが、ネパール人は日本人に近い心を持っていると感じており、相性も良いと思います。また、アニメや漫画といったカルチャーを通じて、日本のことが好きなエンジニアも増えています。ただ、日本の賃金が先進国の中で相対的に下がってきているため、今後、もしかしたら優秀なネパール人材に日本が選ばれなくなってしまうかもしれないと懸念しています。

――日本の企業がインドに進出するケースも増えています。

シャラド: はい。失われた30年の光がインドにあると考える日本の企業は多いです。しかし、インドの人と日本の人は気質や考え方の違いもあり、進出がうまくいかないケースもあると聞いています。その中間に位置しているのがネパール人です。日本とインド、両方のマインドセットを理解しているネパール人が間に入ることで、コミュニケーションのブリッジ役として、日本企業のインド進出の成功確率を高めることができるかもしれません。実際に日本の大企業でも、インド法人を設立する際に、ネパール人を代表にすることで進出に成功している事例があります。

――採用される人材としてだけでなく、それ以上の価値を提供できると。

シャラド: そうです。南海電鉄のJapal事業から生まれるエンジニアのような存在は、単なる人材採用にとどまらず、停滞する日本の産業がインドで成功するための非常に大きなポテンシャルを持っていると思います。日本とインドの架け橋になることで、ネパール人も多くのことを学び、母国に貢献できるようになる。そんな未来を描いています。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

南海電鉄が運営するネパール人の人材紹介・定着支援サービスのJapal 

Japal事業の共同設立者でもあるシャラド ライ氏にお話しをお伺いしました。

シャラド氏の活動の原点は、「教育こそが、国のポテンシャルを引き出す」という強い信念にあります。十分な社会インフラや教育環境が整っていないネパールにおいて、教育は産業を創出し、若者の未来を切り拓くための重要な投資のひとつです,。

また、内陸国であるネパールにおいて、場所を選ばずにグローバルに活躍できるIT産業は、国を変える大きな力を持っています。シャラド氏は、ネパール人エンジニアが日本文化と親和性が高いだけでなく、今後経済成長が見込まれるインド市場と日本企業を繋ぐ「架け橋」としての役割を担う存在になると語っています。

南海電鉄が運営する海外IT/CAD人材紹介・定着支援サービスのJapalは、ネパールと日本、ネパール人と企業をつなげ、2030年に最大79万人のエンジニアが不足するといわれる、日本の人材不足課題だけでなく、ネパールの未来づくりにも貢献すべく活動をしています。

ネパールではPython・Java・AWS・AutoCADなど、日本企業が求めるスキルを身につけた、若者が多くいます。ネパール人エンジニアのスキルや才能に興味のある企業のみなさまは、是非Japalまでご連絡下さい。

Japal(ジャパール)|南海電鉄のIT/CAD海外人材紹介・定着支援サービス


[1] 令和6年末現在における在留外国人数について | 出入国在留管理庁