ネパール語と日本語は似ている?!:言語で繋がる両国の意外な共通点

ナマステ!こんにちは!Hello Nepal編集部です。

皆さんは、ネパールではどのような言語が話されているかご存じでしょうか?ネパールは多民族・多言語国家として知られており、120以上の言語が話されています。主に話されているのはネパール語なのですが、実は、日本語と似ている点がいくつかあります。

本記事では、ネパールで話されている言語について、日本語との共通点、ネパールにおける日本語学習についてなど、ネパールという国を言語の観点から紐解いていきます。明日から使ってみたいネパール語も多数紹介しますので、この記事を読み終えると、少しネパール語が話せるようになっているかも。知れません。

学んでみよう!ネパール言語の特徴

 まずは、ネパールで話されている言語について見ていきましょう。

ネパールでの公用語と母音・子音の数

ネパールの公用語は、ネパール語です。デーヴァナーガリーという文字で書かれます。ネパール語には、子音が36個、母音が12個あります。日本語の子音は13個、母音は5個であることと比較すると、かなり多いことが分かります。子音と母音の数が多いことによって、他の言語を学んで発音する際にあまり難しさを感じない方もいるようです。その他にも、マイティリ語、ボージュプリー語、タル語、タマン語、ネワール語など、120以上の言語が存在します。

【Let’s Learn Nepali①】基本表現編

ここで、ネパール語を少し紹介します。今回は、日常で使える基本表現です。

नमस्ते(ナマステ):おはよう、こんにちは、こんばんは

 皆さんも1度は聴いたことがある言葉でしょう。「おはよう」や「こんばんは」は、他にも表現がありますが、カジュアルな表現として、一般的には「नमस्ते(ナマステ)」が使われるようです。

धन्यवाद(ダンニャバード):ありがとう

 お礼の大切さは、世界共通です。何かしてもらった時、その国の言葉で伝えられるといいですね!皆さん、この記事を読んでいただき、धन्यवाद(ダンニャバード)!

मिठो छ(ミト チャ):美味しい

 ネパール料理を食べた際に、ぜひ使いたい言葉です。「美味しかった」は、मीठो भयो(ミト バヨ)となります。レストランで使ってみましょう!

हो/होइन(ホ/ホイナ):はい/いいえ

 「はい/いいえ」の表現は、受け答えの1つとしてとても便利です。音が柔らかく、筆者は個人的に好きな言葉です。

ネパール人の第二言語 ― それは英語!

 実はネパールの方は、母国語以外にも英語を話すことができます。例えば、ネパール国内の私立学校では、初等教育から、算数や理科、社会などの授業を英語で受けているため、母国語と同じように流暢に話します。日常生活や仕事など、基本的なコミュニケーションは、ネパール語で行いますが、IT業界では、英語を用いて仕事を行うことが多いようです。筆者がネパール人の同僚から聞いた話では、「英語は学んだというより、物心がついたときから身についていた感じ」と言っていました。

ネパール語と日本語の共通点をチェック!

ここまで、ネパールで使用されている言語について解説してきました。デーヴァナーガリー文字は、あまり馴染みがなく、少し難しいと感じたかもしれません。しかし、ネパール語は意外にも、日本語と似ている部分があります。ここからは、共通点を3つご紹介します。

共通点①文法構造

 1つ目は、文法構造です。日本語は、「主語(S)+目的語(O)+動詞(V)」の順番で話します。例えば、

「私は(主語)、日本に(目的語)行きます(動詞)。」

となります。

これをネパール語では、

  「म(私は) जापान(日本に) जाँदैछु।(行きます)」(マ ジャパン ジャデイツ)

と言います。日本語と同じ並びになっているのが分かると思います。他にもいくつか例文を見てみましょう。

मेरो नाम ○○ हो(メロ ナム ○○ ホ):私の名前は○○です

 मेरो(メロ)は「私の」、नाम(ナム)は「名前」、हो(ホ)は「です」という意味です。

जापानी हुँ (マ ジャパニ フン):私は日本人です

 म(マ)は「私」、जापानी(ジャパニ)は「日本人」、हुँ(フン)は「です(自分が主語)」という意味です。

どうでしょう?語順が全く一緒ですね。これで皆さんも自己紹介はバッチリです!

共通点②敬語表現の存在

 2つ目は、敬語表現です。ネパール語にも敬語表現があります。敬意を表す言葉や動詞の活用によって相手に敬意を示します。例えば、二人称代名詞では、友人や同僚など親しい関係にある相手に対しては、तिमी(ティミ)を用いるのに対し、目上の方や初対面の相手には、तपाईं(タパイ)という丁寧な表現を用います。

共通点③文字の読み方が1つ

 3つ目は、1つの文字に対する読み方です。ネパール語では、日本語と同じように、1つの文字に対する読み方は1つです。アルファベットは、1つの文字に対して複数の読み方があります。例えば、「A」は、単語によって「ア」「エ」「エイ」など、読み方が変化します。一方、日本語では、1つの文字に対する読み方は1つで、「あ」は「あ」としか読みません。ネパール語においても同様で、「अ」は「ア(オに近い発音)」としか読みません。

【Let’s Learn Nepali②】旅行編

さあ、ネパール語を学ぶコーナーです!今回は、旅行で役立つ表現です。

・○○ जान चाहन्छु(○○ ジャーン チャハンチュ):○○に行きたいです

 自然や寺院など、訪れたい観光地が多く存在するネパール。この表現をマスターして、素晴らしい思い出を作りましょう!

यो के हो?(ヨ ケ ホ?):これは何ですか?

 この表現を知っていれば、分からないことがあっても問題なし!के(ケ)の部分を違う言葉に変えると多くの質問ができます。例えば、यो स्याउ हो?(ヨ シャウ ホ?)で、「これはリンゴですか?」となります。

यसको कति हो ?(エスコ カティ ホ?):これはいくらですか?

 気に入ったものがあったけれど、値段が分からない―、そんな時にピッタリなフレーズです。

・○○ दिनुहोस्(○○ ディノス):○○をください

 レストランやお土産屋さんなどで大活躍です。食べたいもの、欲しいものをたくさん買いましょう!

ट्वाइलेट कहाँ छ?(トゥワイレット カハンチャ?):トイレはどこですか?

 旅行の際に最も気になることの1つだと思います。この表現を知っていれば、旅行が2倍3倍で楽しめること間違いなしですね!

もちろん英語も通じるので、英語で伝えることもできますが、ぜひ現地の言葉でコミュニケーションを取ってみませんか?

ネパール人の日本語学習事情をのぞいてみよう!

ここまで、ネパールの言語について詳しく見てきました。使用している文字は全く異なりますが、日本語との共通点がいくつかあり、ネパールを少し身近に感じることができたのではないでしょうか。ネパールと日本の繋がりは、これだけではありません!実は、近年ネパールでは日本語を学ぶ人の数が急増しています。ここからは、ネパールでの日本語学習事情についてご紹介します。

ネパール現地:日本語学習者は南アジアで第3位

海外日本語教育機関調査(3年ごとに実施。現在は2021年度のものが最新)によると、ネパールにある日本語教育機関の数は241機関で、南アジアで2番目に多く、そして、学習者数は9,646人で、南アジアで3番目多い数値です。一方、2018年度(前回の調査)からの増加率を見てみると、機関数は約91.3%であり、学習者数は約81.1%で、両数値とも南アジアでトップです。そして、この増加人数は世界でも5番目の割合を占めています。このことから、近年、ネパールにおける日本語学習は急速に拡大していることが伺えます。特に若者から高い関心を集めています。同調査では、日本語学習の目的についても尋ねており、「自国内での現在の仕事・将来の就職」や「日本での将来の就職」と答える人が多いことが明らかになっています。ネパール人にとって、日本は魅力的な留学・就職先の1つであるようです。

 ■南アジアにおける日本語教育機関数

ネパールの日本語教育機関数は241、南アジアで2番目に多い

 ■南アジアにおける日本語学習者数

ネパールの日本語学習者数は9,646人で、南アジアで3番目に多い

■日本語学習者数が増加した国・地域の割合

ネパールの日本語学習者数は近年増加。増加率は世界第5位

出典:国際交流基金 2021年度 海外日本語教育機関調査1

では、日本で働きたい理由は何でしょうか?南海電鉄が運営する海外IT/CAD人材紹介・定着支援サービスのJapal(ジャパール)に応募したネパール人や、Japalで日本語教育受けているネパール人に聞いてみると、以下のような回答がありました。

  • 「日本は技術力が高く、最先端の技術に触れたい」
  • 「これまで磨いてきた自分の技術力をさらに発展させ、日本の企業に貢献したい」
  • 「日本は安心・安全な国であるから」

技術力やスキルを伸ばしたい、挑戦したいという理由も多くありますが、海外に住んで働く上で、やはり安心・安全は欠かせない要因となっています。また、武道や茶道などの日本独自の文化や、富士山や桜などの美しい景色、そして、アニメ・ゲームなどへ興味を持ったことをきっかけに日本で働きたいと思う方もかなり多くみられます。日本を好きになる理由もさまざまです。

日本現地:日本語を学ぶ外国人の中でネパール人は2位

 ネパール現地だけでなく、日本にある日本語教育機関で学ぶネパール人の数も増えています。令和3年から令和4年にかけて急激に増加し、現在の学習者数は中国に次いで2番目に多い、7,819人となっています(令和6年度 日本語教育機関実態調査)。

出典:一般財団法人日本語教育振興協会 令和6年度 日本語教育機関実態調査2

ネパール人の日本語学習の挑戦と魅力に迫る!

新しい言語を学ぶことは難しさも楽しさもあります。ネパール語と日本語は、文字が全く異なるため、難しさの方が大きいかもしれません。南海電鉄が運営するJapal(ジャパール)を通じて日本での就職が決まっているネパール人は、来日前にネパール現地で6ヶ月間の日本語教育を受けており、筆者は彼ら・彼女らと週に1度日本語でコミュニケーションを取っています。そこで、Japalのネパール人材に日本語学習のあれこれを聞いてみました!

ネパール人が語る日本語学習の楽しさ・難しさ

Japalを通じて日本で就職が決まっているネパール人に日本語を学んでいて1番難しいことは何かを尋ねたところ、多くの方が「漢字」と答えました。ネパール語との形は全く異なっており、画数が多い漢字はかなり複雑です。また、「音読み」「訓読み」というように、1つの漢字に対して複数の読み方があり、覚えることが難しいと言っていました。

しかし、日本語を学ぶことは、難しいことばかりではないようです。皆さん口を揃えて、「楽しい」と言っています。特に、新しい言葉を習得することに魅力を感じているようです。学んだ日本語で対話する彼らの目はいつも輝いており、分からない言葉はすぐにノートに書き留めたり、効果的な学習方法を尋ねたりと、いつも前向きな姿勢を感じます。あるネパール人の学習ノートを見せてもらったのですが、漢字を覚えるために、ノートに繰り返し練習していました。彼ら・彼女らの高い志と学ぶ姿に筆者自身も何度も鼓舞されています。

ネパール人の日本語学習への高い意欲は、どこから来るのでしょうか?日本で働きたいという熱い思いはもちろんですが、多くのネパール人が共通して興味を持っているテーマがありました。それは、日本のアニメです。

ネパール人は意外に詳しい!?日本のアニメ

ネパールにも日本のアニメが映画やテレビ等で浸透しており、筆者の周りにいるネパール人もよく目にすると言っていました。特に人気であるのが、「ナルト」や「ドラゴンボール」、「ONE PIECE」です。アニメがきっかけで日本語を学び始める人も多く、アニメの視聴を通して日本語を覚えている人にも出会いました。遠く離れたネパールの地で日本のアニメが注目され、それがきっかけで日本語に興味を持ってくれることを、筆者自身もとても嬉しく思います。このような日本文化への興味の高さが、日本語学習へのモチベーションに繋がっているのかもしれません。

ネパール人は耳が良い!?東アジアと南アジアの日本語習得の違い

ネパール人に日本語を教えている先生に興味深いことを教えてもらいました。それは、ネパール人は聞き取りと発音が上手である、ということです。ネパール人を含む南アジアの人たちは、先生との簡単な会話からすぐに単語を聞き取ることができ、また、発音の習得も早いそうです。一方、中国や韓国を含む東アジア人は、発音よりも書き取りや読解に強いようです。日本人も同じですね。南アジア、東アジアでこのような特徴や違いがあるのは、面白いですね。

まとめ

 この記事では、ネパールという国について、言語の観点から日本語との共通点や違いを中心にご紹介しました。発音や文字の表記は全く異なりますが、文法構造や敬語などは日本語と共通点があり、日本語学習への意欲が高まっていることがお分かりいただけたかと思います。日本からネパールへは飛行機で11時間以上かかり(直行では約9時間)、距離が遠く感じますが、言語や文化の共通点や違いの発見が、両国の距離をぐっと縮めてくれるのではないでしょうか。近年、日本企業での外国人採用が進み、特にネパール人材の日本語教育へのニーズが高まっています。南海電鉄のJapal(ジャパール)も、ネパール人と日本企業とを、言語・文化で結ぶ架け橋として、ネパール人の日本語教育や人材紹介に取り組んでいます。この記事を通して、少しでもネパール語やネパールの文化に触れていただき、心の距離がほんの少しでも近くなったと感じていただけたなら幸いです。

  1. https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey2021/text.pdf ↩︎
  2. https://www.nisshinkyo.org/article/pdf/overview2024.pdf ↩︎